バラと十字の詩人たち「エリファス・レヴィ」とは
魔導書「グリモワール」を語る上で、避けては通れない話しをしたいと思います。それは「バラと十字の詩人たち」と呼ばれた人々の事です。
この話は中世ヨーロッパにまで遡ります。場所はフランス。時代はルネッサンスの隆盛から近代化され、芸術、文化そして物質が世界を動かす世界。つまり科学万能主義に移行する時代で、魔術は衰退の一途をたどるばかりの時代でありました。
世界は神々が創り、精神が世の中を動かす…という考えは、バカにされゴミ切れのように捨て去られようとしていた、そんな時代に一人の男が現れます。
目次
エリファス・レヴィ
時代はもはや魔術を過去の物、忘れ去られた物としていた時代に現れた一人の詩人「エリファス・レヴィ」その人です。
本名：アルフォンス・ルイ・コンスタン （1810～1875年）フランスのパリ出身のロマン派の詩人で、41歳の時に名前をヘブライ語風の「エリファス・レヴィ」に改名しました。
パリのロマン派の文芸サロンに出入りしていましたが、カバラ、錬金術、ヘルメス学、キリスト神秘学などの研究を行い、後に近代ヨーロッパにおける魔術復興の象徴的存在となります。
また彼は「魔術は理性に基づいた合理的科学である」と主張し、タロットや儀式魔術など、多くの伝統を「魔術」の名の下に総括しようとしました。
タロットカードを学んでいた僕としては、レヴィはよく耳にする名前でしが、みなさんは初めて知った名前かも知れませんね。
貧しい靴職人の息子として生まれた彼でしたが、子供の頃から「本食らい」と、あだ名されるほど知識欲旺盛な性格で、やがて彼は信仰に目覚め、カトリックの司祭を目指すようになります。
勤勉な彼は25歳の若さで助祭（司祭の次）の地位にまで上り詰めますが、戒律の厳しいカトリックにあって保守的な体質が水に合わず、翌年にある娘に恋をしたのを契機に、神学校を脱退してしまいます。
また女権運動家のフロラ・トリスタンに出会って社会主義思想を知り、社会主義者で詩人であったアルフォンス・エスキロスの手引きで、小ロマン派の文学サークルに出入りするようになるのです。
その頃、反王権主義の書物を出版して投獄されるのですが、この事が多数のオカルティストの目に留まり、彼らとの交流を通して、やがて「高等魔術の教義と儀式」という書物を発表。ますますオカルティストとして有名になり、新たな地位を築いて行きます。
助祭（伝道師）詩人、神学者など、色んな顔を持つレヴィでしたが、フランスやイギリスのオカルティストに大きな影響を及ぼし、また劇作家や他の多くの芸術家、詩人たちも影響を与えたとされています。
高等魔術の教義と儀式
「高等魔術の教義と儀式」という書物は魔術を学ぶ者は言うに及ばず、タロットを学ぶ者ならば、必ず目を通し必携（持って）おかなければならない物であります。
美しい文体で、有名な詩人たちも影響を受けた格調の高い書物で、僕がタロットを学び始めた頃には、古本屋で数万円もする高価な本でしたが、現在ではアマゾンで4,5千円位で購入できます。
実は、レヴィの本名アルフォンス・ルイ・コンスタンを 、この書物の出版の時、ヘブライ語的な「エリファス・レヴィ」に改名しました。それほど、この書物はレヴィの顔とも言える本であります。
バラと十字
レヴィが書いた書物は、これだけではありません。ヘルメス学にカバラ、錬金術に関する書物もあって、このブログで取り上げている魔導書「グリモワール」の知識を取り入れた本もたくさんあり、オカルティストのバイブル的書物となって行きます。
こうして衰退しかかっていた魔術体系が、フランスの魔術復興運動へと繋がり、多くの有名なオカルティストを生み出し「バラ十字」運動へと姿を変えて行きます。
そして、この運動はオカルティストだけではなく、ギュスターヴ・モローを代表とする多くの芸術家まで影響を及ぼし、世紀末に起こった魔術と芸術の融合へとつながって行きました。
ちなみにモローも「バラ十字」に参加していたと言われています。
今回のまとめ
今回のお話は興味の無い方には、退屈な話だったと思いますが、魔術やタロットを学ぶ人にとって、知っておいて欲しい知識です。細かいことは忘れても構いませんが、何か聞いたことがある…くらいの感覚は持っておいて欲しいと思います。
それでは今回はこの辺で…。最後まで読んでいただいてありがとうございます。みなさんの幸せを願いながら。RYUSHO
